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2024/03/01 不動産投資
建て替えることでバリューアップが期待
老朽マンションの建て替えに、投資家からの関心が高まっている。特に都内のマンションでは、容積率が余っている場合など、戸数を増やして建て替えられるケースがあり、建て替えることでバリューアップが期待できる。
そのため投資目的で、建て替え予定のある中古マンションを狙おうと考える人が少なくないようだ。そうした動きを加速させそうなニュースが、「建物区分所有法」の改正案である。
マンションの建て替えの決議では、所有者が5分の4の賛成が必要だが、条件を満たせば4分の3でも認められることに要件が緩和されるよう要綱案がまとまってきた。
これによりマンションの建て替えが加速することになるのか? マンションの最新事情に詳しい専門家集団を取材した。
建て替えの要件緩和は、一部のマンションでは朗報
「建物区分所有法」の改正の要綱案では、マンションを取り壊す場合においては、所有者全員の合意から、4分の3以上の賛成に緩和され、建て替えでは、所有者の5分の4の賛成が必要とするも、次の3つのいずれかの要件を満たす場合は、4分の3の賛成に引き下げるとしている。
1:地震や火災への安全性が不足している場合
2:外壁などの落下の危険性がある場合
3:バリアフリーの基準を満たしていない場合
個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションを手掛ける、さくら事務所のマンション管理コンサルタント 土屋輝之氏は、上記の要綱案について、次のように考察する。
「住人の高齢化などで理事会の決議や成立しないような一部のマンションについては間違いなくこれは朗報でしょう。しかし、これで建て替えがどんどん進むのかといえば、そこまでの影響はないと考えています。
なぜなら建て替えることで、採算がとれる立地条件以外は資金面で課題が残ります。建て替えには資金+要件の両方の条件が満たされないと進まず、両方の条件を満たすケースは限定的です」
不動産コンサルタントの長嶋修氏も同様に、要件緩和は一定の効果があるもの、その影響は軽微だという。
「資金が潤沢にあり、ディべロッパーが建て替えに乗り気である場合は、要件緩和は有効ですが、マンションは鉄筋コンクリート造で、建設価格が近年急上昇しています。
ここからさらに人件費が上がっていくことが考えられます。3LDKのマンション作るにしても、建築費は坪100万を超え、1戸あたり3000万を超える建築費が想定されます。こうした費用を用意できるマンションは限られるでしょう」
「建物区分所有法」の改正の要綱案は国土交通省が令和5年度中にまとめるとしているが、現実問題として、老朽化マンションの出口戦略が急がれる事態になってきている。
築40~50年修繕費が足りない。『利用限界』を考える
建て替えの議論が進む背景には、老朽マンションが増え、所有者と建物の2つの「高齢化」による課題が浮き彫りになってきていることが挙げられる。
「マンションの長期修繕計画には『利用限界』の概念がなく、12~15年周期で修繕を続けることで永遠に使えるようなイメージさえありますが、現実はそうではありません。
築70年にもなればマンションを解体し、区分所有を終わらせることが現実的な課題となるマンションも少なくありません。
利用限界を定めることで解体までの年数が近づいてきた段階からは一般的な大規模修繕工事するのではなく、建物を解体するための準備金の項目を長期修繕計画のなかに盛り込み、管理組合の解散を視野に入れた長期修繕計画することが望ましい対応であると考えます」(土屋氏)
マンションの『利用限界』を考える切り口となるのは、「ハード面の不備を解消する」ことだと土屋氏。近年、高経年のマンションの管理組合から相談が増えつつあり、給排水設備の老朽化に関する相談が多いからだ。
マンション管理コンサルタントの山本直彌氏は、「マンションは築30年目以降に修繕費の不足が生じやすい」と指摘する。
「たとえば機械式駐車場&エレベーターの更新は25~30年が目安で、給水管や排水管の更新は35~45年、玄関や窓の更新は40~50年が目安とされています。
しかしマンションの長期修繕計画は、築30年目ぐらいまでの修繕計画が主で、築40~50年にかかるコストを見据えてないケースが多く、築30年以降の修繕費が足りないということになりがちです」(山本氏)
近年、築浅マンションでは分譲時に購入しやすいように修繕積立金を抑えて設定されているケースもあり、これらはまだ修繕積立金不足として可視化されていない。さらには昨今の修繕費の高騰で、数年前の計画よりもコストがかかる事態になっている。
「高経年のマンションほど修繕費の資金不足の課題が顕著です。マンションには建物と所有者の2つの老いが課題とされていますが、現実問題、この2つの高齢化のために、修繕積立金を上げたくても上げられず、積立金不足に陥っているマンションが見受けられます。積立金不足で、すべての工事が実施できないがために修繕工事のトリアージ(優先順位付け)が行われている状況です」(山本氏)
築30~50年にお金のかかる工事が集約されていくためトリアージするにしても、配管の劣化状況などを見て、修繕の時期を決めることになる。
「たとえば給排水設備の配管は、材質により交換時期が異なります。一般的な長期修繕計画では材質に関わらず交換時期が示されているのですが、材質を見極めて交換することでコストを抑えることが可能です」(山本氏)
築54年、約50戸のマンションでは、排水管が鋳鉄管で交換工事に約8000万の見積もりが出された。実際にその金額が適正なのかどうか専門家が診断し、他社も含めて再見積を取ることで工事費を約2200万下げ、5800万円に抑えることができたそうだ。
このように排水管の寿命を見極める「配管寿命診断サービス」を活用することも修繕費を抑えるためには有効だ。
さくら事務所代表の大西倫加氏は、老朽化マンションの出口戦略について、「いわば社会実験的にマンションの老いが進行して、市場と連動して格差が広がっている。強いものはより強く、弱いものはより弱くなってきている」と考察する。
建て替えでバリューアップできるのか、それとも修繕で長く使い続けていくのか。この議論は今後ますます活性化していきそうだ。
健美家編集部(協力:
(たかはしようこ))
引用元:【要件緩和でマンションの建て替え増加? 建て替えか修繕か明暗わける老朽マンションの出口戦略|不動産投資の健美家 (kenbiya.com)】
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